リッター125円のガソリンスタンドと130円のスタンドはどちらが儲かるか?


中小企業診断士の石村飛鷹です。

 

皆さんのご近所のセルフ型ガソリンスタンドで、

安売りをするお店としないお店はありませんか?

 

なぜ同じレギュラーガソリンなのに価格が違うのでしょうか?

 

それぞれのガソリンスタンドの経営としては

果たしてどちらが儲かっているのでしょうか?

私の事務所の近くにも安売りをするガソリンスタンドと

全く安売りをしないガソリンスタンドがあります。

 

安売りをするガソリンスタンドはいつも混んでいます。

連休前などは行列ができていることもあります。

一方、安売りをしないガソリンスタンドはいつもまばらです。

 

一見すると安売りをした方がお客さんをたくさん集められて

儲かっていそうな気がしますが、果たしてそうでしょうか。

 

どちらも街の中心部から同じくらいの距離にあります。

ガソリンの品質はどちらも同じです。

ガソリンの品質はJIS規格でオクタン価の規定があるためです。

どちらも「セルフ」です。

 

市中の平均価格がだいたい128円くらいだとすると、

片方はレギュラー1リッター125円、

もう片方はレギュラー1リッター130円です。

 

その差は5円!

たった5円ですが年間1万キロを走った場合、

平均燃費10km/lで年間に給油する量は1,000リットル、

年間での価格差は5,000円、10年で50,000円。

 

 

私も「倹約を旨とする」をモットーに普段は125円の方を使っています。

先日、気になってわざと130円のガソリンスタンドで給油してみたところ、

両店の実力差を把握することが出来ました。

サービスが違った


130円のお店は確かに「セルフ」ですが、

店員さんが積極的に話しかけてきます。

 

「空気圧を見ましょうか?これから高速でしたら空気圧高めにしますね。」

「ウォッシャー液をサービスで入れますよ」

 

そしてさらにすごいのが提案力です。

タイヤの空気圧を見るついでにタイヤの溝の減り具合を教えてくれます。

ウォッシャー液を見るついでにエンジンオイルの交換時期を教えてくれます。

交換時期であれば値段と所要時間を教えてくれます。

先日「そろそろエンジンオイルを交換しなければ」と考えていたところに提案してもらったので換えてもらうことにしました。

 

事務所内にはコーヒーサービスがあり雑誌も置いてあります。オイル交換のために待っていた小1時間ほどで、受付カウンターには次々にお客さんが訪れ、「ワイパー交換してください」「タイヤ交換おねがいします」と注文していきます。

 

気になってレシートに記載のある法人名を検索したところ、なんと、今年で創業100周年を迎える地元の優良企業でした。

安売りの末路


一方、125円のお店は店員さんは事務所から出てきません。

 

 

お客さんと接点がありませんので、売れるものは安いガソリンだけです。

 

先日、125円のガソリンスタンドはあれだけお客さんが入っていたはずなのになんと、突然閉店してしまいました。コロナによる需要低迷で固定費負担を賄えなかったのでしょう。

 

※セルフ型スタンドでも制度上、完全に無人には出来ず、

 危険物取扱者の資格を持つ店員がお客さんが給油開始時に

 安全を確認して「給油許可」ボタンを押す必要があります。

 中にいるおじさんがひたすらそのボタンを押しているのです。

  

収益構造がまるで違う


売上は客数×客単価です。

 

経営者として客数が少ないと不安になります。

そしてつい自信の無さから単価を下げがちですが、

中小企業の値下げは往々にして自社を追い詰めます。

 

130円のガソリンスタンドは客数は少ないですが、

ガソリン以外の物販を含め客単価が高いのでまったく問題なかったのです。

 

お客様ひとりひとりに丁寧に提案して

限られた整備工場で時間のかかる施工を行うので

お客さんに沢山来られてはむしろ困るのです。

 

また、「市中の相場よりも高い金額で給油してくれる」

という時点で優良見込み客のフィルターにもなっています。

 

おそらく、客数は少ないので130円のガソリンだけを販売したのでは

十分な利益は得られないと思います。

 

そこで重要なのが提案力です。

自信を持って提案すれば売れるんです。

逆に提案しなければ永遠に売れません。

 

セルフ型ガソリンスタンドが主流となった昨今、

昔のように提案してくれるお店がなくなってしまいました。

 

提案された側は「押し売りされた」とはならず

「教えてくれてありがとう」となります。 

得られる教訓


いかがでしたか?

お客さんがたくさん入っていて一見儲かっていそうに見えた安売りのお店と、

お客さんがあまり入っていないけど100年続く優良企業のお店。

 

  1. 中小企業が安易な値下げをしてはいけない
  2. 自信を持って提案すれば売れる

 

 

この2点を老舗企業が教えてくれました。

この記事の筆者


石村 飛鷹(ひよう)

 

中小企業診断士、MBA(経営学修士)

いしむら経営コンサルタント事務所 代表

 

日本ヒューレット・パッカードにてIT統合コンサルティング、

東京商工会議所で経営指導員として数多くの中小企業向け

コンサルティングに従事したのち独立。

経営者だけでなく営業担当者、製造担当者を巻き込んで

利益改善を図ることを得意とする。補助金採択実績や講演実績も豊富。